薬剤師のケースレポート日誌

国内外の医薬品有害事象に関する報告をデータベース化する試みです。

バレニクリン:急性腎不全

Varenicline-associated acute renal failure.[海外報告]

Ann Pharmacother. 2008 Dec;42(12):1908-11. PMID: 18984856

被疑薬:バレニクリン(代表的な商品名▶チャンピックス)

症例

 

53歳白人男性。中等度の腎機能障害あり

入院の1週間前よりバレニクリン服用開始。(他の薬剤は過去2か月で安定)

症状

 

急性腎不全にて入院

血清クレアチニン4 mg/dLから10.6 mg/dLへ上昇

疑われた

有害事象

バレニクリンによる急性腎不全

 

その後の経過

入院後バレニクリン中止、他の治療は変更せず。

その後、血清クレアチニンレベルは低下。

 

Naranjo probability scaleにてバレニクリンが原因薬剤である可能性が高いと報告されている。

本邦においてチャンピックス®の添付文書には重大な副作用として肝機能障害、黄疸の記載があるものの、急性腎不全についての記載はない。

本剤は主として腎排泄されるため、腎機能が低下している患者には注意を要する。軽度の腎機能障害を有する被験者(クレアチニン・クリアランス(CLCR)推定値:50mL/分<CLCR≦80mL/分)では、バレニクリンの薬物動態に対する腎機能障害の影響は認められなかったとしているが、中等度(CLCR推定値:30mL/分≦CLCR≦50mL/分)及び重度(CLCR推定値:CLCR<30mL/分)の腎機能障害を有する被験者では、腎機能が正常な被験者(CLCR推定値:CLCR>80mL/分)と比較してバレニクリンの全身曝露量がそれぞれ1.5倍及び2.1倍に増加したと添付文書にも記載がある。

なお重度の腎機能障害患者(クレアチニン・クリアランス推定値:30mL/分未満)の場合、0.5mg1日1回で投与を開始し、その後必要に応じ、最大0.5mg1日2回に増量することとされている。