薬剤師のケースレポート日誌

国内外の医薬品有害事象に関する報告をデータベース化する試みです。

インスリンアナログ:インスリンアレルギー

インスリンアナログ治療中にインスリンアレルギー及びインスリン抗体のため血糖不安定性をきたした2型糖尿病の1例

糖尿病Vol. 57 (2014) No. 6 p. 438-445

被疑薬:インスリンアナログ (代表的な商品名▶ノボラピッド)

症例

 

症例は83歳男性.経口血糖降下薬で2型糖尿病を治療されていたが,血糖コントロール増悪のため2010年9月にインスリンアナログ注射を開始

症状

 

翌年4月より血糖日内変動が不安定となり,注射部位に掻痒感を伴う膨疹・硬結が出現

疑われた

有害事象

ヒトインスリン特異的IgE陽性,インスリン皮内反応陽性でありインスリンに対する即時型アレルギー

その後の経過

内因性インスリン分泌能は残存していたためインスリンを中止し,アカルボース・シタグリプチンに変更したところ血糖不安定性は改善し,フェキソフェナジン投与によりアレルギー症状も消失

メトホルミン:乳酸アシドーシス・衝心脚気

低用量メトホルミン投与中に乳酸アシドーシスと衝心脚気を合併した2型糖尿病の1例

糖尿病Vol. 57 (2014) No. 3 p. 188-196

被疑薬:メトホルミン(代表的な商品名▶メトグルコ)

症例

 

症例は69歳,男性.アルコール依存症で近医に入院中。5ヵ月前よりメトホルミン500 mg/日,グリベンクラミド2.5 mg/日が開始

症状

 

5日前より嘔気,食欲不振が出現し,発熱,意識障害で搬送。アニオンギャップ開大の代謝性アシドーシス。ビタミンB1値が正常下限

疑われた

有害事象

本例の乳酸アシドーシスは,メトホルミンの副作用,ビタミンB1欠乏,心原性ショックが複合的に関与

その後の経過

脚気心を疑いビタミンB1の補充

 

メチレンジオキシメタンフェタミン:脊髄動脈瘤破裂

Posterior spinal artery aneurysm rupture after 'Ecstasy' abuse.[海外報告]

BMJ Case Rep. 2014 Jul 3;2014. PMID: 24994748

被疑薬:メチレンジオキシメタンフェタミン(代表的な商品名▶エクスタシー)

症例

 

10代の症例

症状

 

エクスタシーを摂取後、首の凝り、頭痛や吐き気

頭部CTで異常は認めなかったが、CT血管造影は、脳血管炎を示唆した。頸髄血管造影により動脈瘤を認めた

疑われた

有害事象

メチレンジオキシメタンフェタミン乱用後の脊髄動脈瘤破裂

その後の経過

動脈瘤の外科的切除

 

セフェピム:レッドマン症候群

Red man syndrome adverse reaction following intravenous infusion of cefepime.(海外報告)

Antimicrob Agents Chemother. 2012 Dec;56(12):6387-8

[フルテキストPDF]

被疑薬:セフェピム(代表的な商品名▶マキシピーム)

症例

 

髄膜脳炎を発症している25歳の男性。心停止によりICUに入室後、カテーテル感染や呼吸器感染など院内感染症で種々の抗菌薬を投与された。回復期に内科よりセフェピム(2 g over 30 min, three times daily)投与。薬物アレルギーやアトピー性疾患の既往なし。

症状

 

セフェピム投与12日目に首や胴体上部に発疹。呼吸困難、頻脈、低血圧などの他の症状はなし。

疑われた

有害事象

セフェピムによるレッドマン症候群

(セフェピム再投与にて症状再発を確認)

その後の経過

静脈内抗ヒスタミン薬投与により状態改善

レッドマン症候群は典型的にはバンコマイシンの急速静注で発症することが知られており、ヒスタミン遊離による発疹が特徴的である。アレルギーではない。

ランソプラゾール:低マグネシウム血症

Lansoprazole-induced hypomagnesaemia.[海外報告]

BMJ Case Rep. 2014 Jan 10; 2014 PMID: 24414180

被疑薬:ランソプラゾール(代表的な商品名▶タケプロン

症例

 

73歳の女性

症状

 

マグネシウム血症によると考えられた上室性頻拍

疑われた

有害事象

PPI誘発性低マグネシウム血症

その後の経過

マグネシウム補正後、不整脈は改善

PPI中止後は、マグネシウムの経口投与をすることなく、

血清マグネシウムは基準値内

ラベプラゾール:低マグネシウム血症

Hypomagnesemia associated with a proton pump inhibitor.

Intern Med. 2012;51(16):2231-4PMID: 22892510

[フルテキストPDF]

被疑薬:ラベプラゾール(代表的な商品名▶パリエット

症例

 

64歳の男性。5年のラベプラゾール(10mg/日)服用歴

アルコール多飲や喫煙なし。併用薬はシルニジピン、アトルバスタチン、メコバラミン、 リマプロストレバミピド、セレコキシブ、ザルトプロフェン

症状

 

吐き気、両足首の関節炎、四肢の振戦

マグネシウム(0.2 mg/dL), 

▶カルシウム(5.8 mg/dL) 

カリウム(2.3 mEq/L)

疑われた

有害事象

PPI誘発性低マグネシウム血症

その後の経過

ラベプラゾールを中止し、マグネシウム、カルシウム、カリウム電解質の是正をすると7日後には状態が安定し、症状が再発することなく、改善

 

フロセミド:偽性Bartter症候群②

フロセミド長期服用によるpseudo-Bartter症候群の1症例

腎における尿希釈・濃縮能に対する検討

日本内科学会雑誌Vol. 75 (1986) No. 4 P 570-575

[フルテキストPDF]

被疑薬:フロセミド(代表的な商品名▶ラシックス

症例

 

29才女性で14年間のフロセミド服用歴と浮腫増悪に対する習慣性の食塩制限

症状

 

入院時持続性低K血症および代謝性アルカローシスを呈しており、身長154cmに対して体重重28.5kgと著明なやせ型

疑われた

有害事象

利尿薬長期服用、食塩制限、 K欠乏により不可逆性濃縮障害を伴った偽性Bartter症候群

その後の経過

 

 

[参考]地域医療の見え方:健康食品と偽性Bartter症候群