ブルレノルフィン:接触皮膚炎
ノルスパン®テープによる接触皮膚炎の1例
皮膚の科学Vol. 12 (2013) No. 2 p. 69-73
被疑薬:ブプレノルフィン(代表的な商品名▶ノルスパンテープ)
症例 |
37歳,女性。子宮内膜症,間質性膀胱炎による慢性疼痛に対してペインクリニック部でノルスパン®(ブプレノルフィン)テープを処方 |
症状 |
3回目に貼付した2日後より前胸部左側および右上腕外側の貼付部に一致してそう痒を伴う紅斑が出現 |
疑われた 有害事象 |
パッチテストの結果,ノルスパン®テープで陽性,ブプレノルフィンを含まず基剤が同一組成の見本品で陰性であったことから,ブプレノルフィンによるアレルギー性接触皮膚炎と診断 |
その後の経過 |
抄録に記載なし |
※本剤による接触皮膚炎は本邦では初めての報告
抗精神病薬:ジストニア
抗精神病薬による薬剤性口顎ジストニアの1例
日本顎関節学会雑誌Vol. 26 (2014) No. 1 p. 15-19
被疑薬:プロクロルペラジン,ブロナンセリン(代表的な商品名▶ノバミン、ロナセン)
症例 |
20 代の女性。▶顎関節脱臼および顎の痛みにより救急車を要請し、救急科に搬送。救急科で採血と CT 撮影の後、右側顎関節脱臼の診断でプロポフォール鎮静下に徒手的顎関節脱臼の整復が行われた。しかし,覚醒直後に再度脱臼したとのことで口腔外科に診療要請。 |
症状 |
血圧 130/90 mmHg、脈拍 83 回分、体温 36.9℃ 、血液検査データは正常範囲内。左側前腕にリストカット痕。開眼失行,眼球上転。左側咬筋,外側翼突筋の過緊張を認め,会話困難。徒手的な強制開口が非常に困難。両側ともに顎関節部の陥凹はなく、顎位は閉口状態であり、脱臼は疑われず下顎の右方偏位をきたしていた。 |
疑われた 有害事象 |
患者の年齢,リストカット痕などの所見より,全身疾患や薬剤性などの二次性口顎ジストニアを強く疑い,病歴の再聴取を行った。その結果,統合失調症にてプロクロルペラジン,ブロナンセリンの 2 剤を内服していることが判明。精神科医師の診察により急性の薬剤性口顎ジストニアと診断 |
その後の経過 |
抗精神病薬による薬剤性ジストニアの治療として第一選択薬とされるアセチルコリン阻害薬の乳酸ビペリデンを,最低用量である 5 mg 筋肉注射し、5 分後には開眼失行,眼球上転が消失し,下顎の右方偏位および開口困難の症状が著明に改善した。その後,患者の通院している精神・神経科に対して,現在の内服薬の調整や薬剤性口顎ジストニアの治療継続を依頼し終診となる。 |
フェンタニル:色素沈着
フェンタニル貼付剤による色素沈着
Palliative Care ResearchVol. 8 (2013) No. 1 p. 523-528
被疑薬:フェンタニル(代表的な商品名▶フェントステープ、ディロテップパッチ)
症例 |
43歳男性。オキシコドン徐放剤 240 mg/日, プレガ バリン 300 mg/日, ロキソプロフェン 180 mg/日, デュロキセチン 20 mg/日を投与。しかし, 眠気があり, 疼痛もみられたため, フェンタニル貼付剤 (フェントス®) 2 mg/日を開始。各種薬剤の中止や追加を適宜行い, フェンタニル貼付剤 12 mg/日, オキシコドン徐放剤 280 mg/日, プレガバリン 150 mg/日, ロキソプロフェン 180 mg/日, ミルタザピン 3.75 mg/日にてコントロール |
症状 |
「皮膚に貼付剤のあとが残るので, 1 週間前から貼付していない」との訴えがあった。貼付剤の形・大きさに一致し て, 明らかな色素沈着がみられた。 |
疑われた 有害事象 |
フェンタニル貼付剤による色素沈着 |
その後の経過 |
色素沈着は同剤中止後軽快、もしくは消失 |
アリピプラゾール:高血糖
アリピプラゾール投与開始後に血糖値の上昇をきたした統合失調症の1例
糖尿病Vol. 52 (2009) No. 4 P 295-300
被疑薬:アリピプラゾール(代表的な商品名▶エビリファイ)
症例
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44歳,女性.統合失調症に対し 服用中のリスペリドンを3 mg/日に増量 |
症状
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口渇が生じ,3月4日全身痙攣,血糖値2089 mg/dl |
疑われた 有害事象 |
糖尿病性非ケトン性高浸透圧昏睡
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その後の経過 |
同薬を中止し,インスリン加療を開始. 治療経過良好にて,退院後は食事療法のみ |
※米国精神医学会治療ガイドラインでは,アリピプラゾールは糖・脂質代謝異常を来たす危険性がない,あるいは治療域で稀にしか副作用が起きない薬剤とされているが,使用時には血糖測定をはじめ慎重な観察を行う必要がある.
パロキセチン:SIADH
パロキセチン内服中に低ナトリウム血症を来し,SIADHと診断された食思不振の高齢患者
日本老年医学会雑誌Vol. 45 (2008) No. 1 P 90-94
症例
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82歳男性,うつ状態に対してスルピリドを投与されていたがパーキンソニズムの副作用のため中止し、パロキセチン内服へ変更。その後食事,飲水ができない状況続いていた。 |
症状
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低ナトリウム血症が出現。緊急入院。血清ナトリウ 126mEq/mlと低下.ADH測定感度以上,血漿浸透圧242mOsm/kg,尿浸透圧439mOsm/kg,尿中ナトリウム100mEq/l以上 |
疑われた 有害事象 |
パロキセチンによると思われるSIADH |
その後の経過 |
中枢疾患や悪性腫瘍は否定され,薬剤性によるものと考え,パロキセチンの内服中止した.その後血清ナトリウム値は正常化し,自主的な経口摂取が可能となり退院した. |
※.SIADHにより生じた低ナトリウム血症の症状(全身倦怠感,食欲不振など)は,抑うつ状態と類似しているため鑑別が困難になる症例もある
パロキセチン:慢性膵炎の急性増悪
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) により慢性膵炎の急性増悪をきたした透析患者の1例
日本透析医学会雑誌Vol. 35 (2002) No. 2 P 115-117
症例
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症例は25歳の男性. アルポート症候群による慢性腎不全にて透析歴12年。慢性膵炎を合併。パニック障害を発症し, 2000年12月より塩酸パロキセチン水和物による治療を開始 |
症状
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服用開始21日目の血液検査で膵酵素の急上昇を認めたが自覚症状はなく, 他覚的所見でも異常を認めなかった |
疑われた 有害事象 |
SSRIによる慢性膵炎の急性増悪 |
その後の経過 |
SSRI (selective serotonin reuptake inhibitors) と系統の異なるスルピリドに変更したところ膵酵素の上昇はなかった. |
トシリズマブ:深頸部感染症
トシリズマブ投与中に発症した敗血症性ショックを伴う深頸部感染症例
耳鼻咽喉科臨床Vol. 106 (2013) No. 1 p. 75-80
被疑薬:トシリズマブ(代表的な商品名▶アクテムラ)
症例
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リウマチに対するトシリズマブによる21ヶ月の治療歴を持つ61歳の女性。急性の頸部腫れ、ショックで救急診療受診 |
症状
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咽喉の粘膜の重度の腫れや上気道の狭窄により集中治療室にて緊急挿管、入院を必要。メロペネムおよびクリンダマイシンによる抗菌療法を行ったが、上気道の狭窄が再び悪化となり、再挿管や気管切開を必要とした |
疑われた 有害事象 |
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その後の経過 |
46日間の入院を要した
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(関連)リウマチに対する生物学的製剤